デンキ屋が20年前に語りたかったゲームセンターの話

現在電気屋の筆者がゲーム業界にいた頃の体験から語るゲームセンターとアーケードゲームの話。基本的には当時の記憶が頼りなので多少の間違いは大目に見てください。

20年前に語りたかったアーケードゲームの話(1) 本当に優れた名機とは

アーケードゲームの最盛期

私がゲーム業界にいた1980年代は、アーケードゲームが最も進化、成長していた時期だと思う。

グラフィックやサウンド技術が向上し、それなりに味はあるものの、いかにもドット絵丸出しなゲーム画面から、映像作品と呼んでも良い程の演出が可能になっていく。
ハードの進歩はそれまで不可能だったアイデアをどんどん実現させ、ゲームクリエイターを目指した優秀な人材も集まり始めた。
ゲーム会社も発展途上であったこの業界の可能性を探るべく、若い開発者の意見を取り入れ試行錯誤を繰り返しながら様々なジャンルのゲームを開発していったのである。

ただ、この頃はまだ戦略というか、あまり市場を意識した開発のしかたをしていなかったようで、「名機」と呼べる素晴らしい完成度の物が世に出ると同時に、逆に「迷機」と呼べるような珍妙なゲームも数多く誕生した時期でもある。

アーケードゲームの「名機」とは

さて、「名機」と呼べるゲームとはどのような物を指すのだろうか?

いわゆるゲームオタクという人達が増えてきたのもこの頃だったと思うが、店に集まる彼らのいう「名機」とは、ゲームにストーリー性を追い求め、美麗でサウンドの完成度も高く、高い難易度と緻密な攻略法を求められるゲームのことを指していた。
確かに私もそれらは大事な条件だとは思う。企画を練り込み、画面やサウンドを作り込まれたゲームは単なる商品としてだけでない情熱を感じさせ、まずは一見して惹きつける要素がなければプレイしてはもらえないからだ。

だが、運営側の視点から考えた時、絶対に無視することのできない条件がある。
それは「売上」である。

どんなに質的に優れたゲームであってもインカム(実際にコインが投入された枚数、つまり売上そのもの)が上がらなければ早々にゲームセンターから姿を消してしまう訳で、すぐに忘れ去られてしまうゲームを「名機」とは呼べないであろう。

面白いゲームなら売上も当然上がるんじゃないの?と皆は思うだろうが話はそう単純ではない。

極端な例だが、ゲームそのものは面白いと評価されても難易度が簡単すぎて1回のプレイ時間が1時間以上かかるようだと、当然ながら1日稼働しても千円程度しか稼げない。かと言って難し過ぎて30秒もかからず終わってしまう様なゲームは則クソゲー認定されて見向きもされなくなってしまうだろう。

つまり、難易度調整ひとつ間違えてもインカムは上がらないものなのだ。

結論としては、表現力の高さや斬新なシステム等の独自性、優れたゲームバランスや快感度、完成度の高さによる持続性、他店では置いてないといった希少性等様々な要素が高いレベルで融合し、結果的に爆発的、又は数カ月にわたる安定的なインカムを稼ぐことの出来たゲームこそが「名機」と呼べる、と私は考えるのだ。

次回は、名機の条件についてもう少し考察したいと思う。